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耳のおはなし

中耳炎の精査と治療

中耳炎の精査と治療

中耳炎も耳鼻科に多い疾患の一つです。

中耳炎といっても、軽いものから重篤なものまでいろいろありますが、いずれも患者様が自覚する症状としては、耳痛、耳漏、耳閉感、難聴、耳鳴りが主なものでしょう。

そのほか炎症の強い耳ではめまいや顔面神経麻痺、耳後部の腫脹などが出ることがあります。

小さな子供では耳痛くらいしか訴えがありませんが、普段の観察で、最近お返事が悪い、聞き返しが多い、テレビの音が大きい、話し声が大きい、耳をしきりに触って気にするなどがあれば、中耳炎を心配してみてください。

耳の診察はまず耳鏡というラッパのような形の金属管を耳に挿入して内部を観察しますが、より精密に見るために顕微鏡で観察したり、必要に応じて、鼻や喉と同様に内視鏡を使うこともあります。内視鏡で観察した画像はテレビモニターで患者様やご家族と一緒に見ることができ、説明だけではわかりにくい耳の中の異常を自分の目で確認して納得していただくことができます。

中耳炎には主なものとして、滲出性中耳炎、急性中耳炎、慢性中耳炎、癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎などがあります。

<正常鼓膜の写真>

滲出性中耳炎

中耳炎の精査と治療

小さな子供に多い中耳炎ですが、もちろん大人にも起こります。

鼓膜の奥の空洞の空気調節障害が原因で、鼓膜に圧がかかったり、貯留液がたまったりするために、飛行機に乗った時のような耳閉塞感や難聴感を感じたり、音のこもりや響き、雑音、たまには短時間の耳痛が出たりします。子供だと、鼻の悪い時に起こりやすいようです。

大人では鼓膜奥の空気調節をする耳管という部分の機能がもともと悪い方、潜水や飛行機など圧の大きな変化に曝された後、また副鼻腔炎がある場合などに起こりやすいものです。

鼻の奥から耳に空気を送る通気治療、鼓膜の切開排液や鼓膜チューブを留置する治療などを行うこともありますが、特に子供では鼻の治療を根気よく行うことで、結果的に耳も良くなることが多いです。

<滲出性中耳炎の写真>

急性中耳炎

中耳炎の精査と治療

急性中耳炎は特に6歳以下の子供に多い中耳炎で、風邪のときや汚い鼻汁が詰まっているときに起こりやすいものです。

鼓膜の奥の空洞に細菌性の膿汁が貯留して鼓膜が発赤・膨隆し、更には鼓膜がパンクして耳漏が出ることがあります。耳痛が強く、難聴感もあります。乳幼児では、高熱が出た場合急性中耳炎も疑ってみる必要があります。

鼓膜の膨隆が強く膿汁の貯留が明らかだったり、痛みが強いときは、鼓膜を切開排膿したり抗生剤を投与したりします。鼓膜切開は鼓膜に小さな穴を開けて内部にたまっている貯留液を吸引・排膿するものです。じっとしていられるお子さんや大人は耳に麻酔液をためて局所麻酔をしてから切開しますが、小さなお子さんでじっとできない場合は、切開するのは一瞬ですので麻酔しないで切開します。切開は顕微鏡下に鼓膜を良く観察しながらおこないますので、安全です。

排膿することで熱が下がり中耳炎が早期に治癒する場合がおおいです。急性中耳炎の急性期の治療で膿汁が消失し自覚症状が治まっても、滲出性中耳炎に移行することがよくありますので、最後までしっかり治療することが大事です。

<急性中耳炎の写真>

慢性中耳炎

急性中耳炎を反復しているうちに鼓膜の穿孔が塞がらなくなり、また鼓膜の奥の粘膜が肥厚して滲出液を産生し、耳漏を反復する状態です。

痛みはそれほど強くありませんが、穿孔の大きさによっては難聴があり、また難治性です。耳漏などの症状の出現時に治療をしますが、日常生活に支障をきたすような慢性中耳炎は手術の対象になります。

癒着性中耳炎

癒着性中耳炎は滲出性中耳炎と慢性中耳炎がミックスしたような状態の中耳炎です。長期に及ぶ鼓膜の奥の空気の調節障害や粘膜の炎症の反復で、鼓膜が空洞の奥の壁と癒着してしまう状態です。

鼓膜が全然振動しなくなるため、難聴の程度が強くなります。もともと鼓膜の奥の空洞の空気調節が自然にできないために起こるので、手術をしても再発することも多いです。

その一方、癒着の状態で放置しておくと、次に述べる真珠腫性中耳炎になっていく可能性もある中耳炎です。まずは日ごろからの通気治療から始めてみるのが望ましいと思います。

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎は放っておけば聴力の悪化、めまい、顔面神経麻痺なども起こる可能性のある少し重篤な中耳炎です。

これも鼓膜の奥の空気の調節障害が原因になることが多いのですが、稀に先天性の真珠腫もあります。鼓膜の表面あるいは奥の空洞で真珠のような白い塊が徐々に増大し、鼓膜と聴神経をつなぐ耳小骨という骨の鎖を破壊して難聴を起こしたり、周囲の三半規管や顔面神経管を形成する骨を圧迫や炎症のために侵食し、めまいや顔面神経麻痺を引き起こすのです。

頭蓋骨に接している部位でもあるので、非常に稀ではありますが、髄膜炎に進展することもあります。自覚症状は慢性中耳炎とほぼ同じです。治療は手術が必要になります。

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎


中耳炎もいろいろ多彩でなかなか一度にご紹介することは難しいですので、今後別のコラムで少しずつご紹介したいと思います。自分のことで気になり詳しくお聞きになりたい方は是非直接お尋ねください。

耳掃除について

耳垢(みみあか)、耳掃除について

耳垢は外耳道(耳の穴)の外側約1/3で作られ徐々に手前のほうに移動し取りやすくなる仕組みがあります。外耳道には自浄作用があり、外耳道の毛により自然に押し出されるのです。

耳掃除を頻回にやると逆に奥におしこんで耳垢が取りずらくなる事があり注意が必要です。 また耳垢はカサカサタイプとベタベタタイプがあります。これはその人の体質で生まれつき決まっています。 カサカサタイプは耳かき棒か綿棒で、ベタベタタイプは綿棒で掃除するのが良いでしょう。

1.耳掃除の頻度

人にもよりますが成人は月に一度、多くても月に二度程度が適当です。赤ちゃんの場合は月に 2-3回が適当です。

2.どこまで掃除するか?

外耳道の奥では耳垢はできないので、耳掃除は耳の入り口から1cmぐらいの範囲で充分です。奥まで掃除すると耳垢を押し込む事があります。

3.赤ちゃんの耳掃除

赤ちゃんの皮膚はデリケートです。強くやらない、しょっちゅうやらない、耳の入り口にできたものだけをとる、子どもが暴れて自信が無いときは耳鼻科でとるがコツです。

4.耳掃除の仕方

通常は綿棒で除去します。耳垢が硬いときは耳かき棒を使いましょう。赤ちゃん、小さな子どもはベビーオイルをつけた柔らかい綿棒を使用しましょう。

また耳掃除は周囲に誰もいない時にしましょう。小さな子どもが周囲にいる時は急に抱きついて来ることがあり注意しましょう。耳の穴(外耳道)や鼓膜に傷ができる事があります。

除去が困難なときは耳鼻科を受診しましょう。

5.耳いじりがやめられない耳いじり依存症

耳いじりをやりすぎると外耳道の皮膚が徐々に厚くなり、自浄作用も低下し耳垢がたまりやすくなります。 さらに外耳道の炎症も起こしやすくなり耳の穴が狭窄する場合もあります。耳いじりをやりすぎるとかゆくなる、触りたくなる、また触りたくなる、ますます触りたくなるの悪循環をおこします。耳かきはホドホドがお勧めです。かゆみの強い時は抗アレルギー剤の内服やステロイド軟膏の塗布が有用です。

耳管に関する疾患

耳管に関する疾患

耳管に関する疾患(1)---滲出性中耳炎、風邪罹患時の耳閉感、航空性中耳炎

耳管の働き


鼓膜の奥には中耳腔という小さな空洞があり、耳管という管で鼻の奥とつながっています。 周囲の気圧が変化すると、鼓膜は膨らんだり、へこんだりして耳がつまった感じがでます。中耳腔の圧を調節するために耳管が開くと、中耳腔の圧と外の圧が同じになり耳がつまった感じが良くなります。 耳管は通常の状態では閉鎖していますが、嚥下やあくびの時に筋肉(口蓋帆張筋)が収縮する事で開きます。また、鼻をつまんで呼気で鼻咽腔圧を高めると耳管は開きます(いわゆる耳抜き)。耳閉感、軽い難聴、飛行機に乗った後の耳痛や耳閉感がある時はこの耳管の働きが悪くなっている可能性があります。注意しましょう。また風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などの時は鼻の奥に腫れが生じ耳管の働きが悪くなりやすいのでこういった症状が出やすくなります。 

1.滲出性中耳炎


痛くもかゆくもありませんが耳閉感、軽度の難聴をともなう中耳炎です。 耳管機能の未熟な小学生までの子どもや老人に多い疾患です。成人でも風邪の後におこる事があります。また幼児の場合は難聴の訴えがないことが多く見過ごされやすい疾患です。聞きかえしが多い、返事をしない、テレビ音が大きいで気が付くこともあります。 風邪や鼻炎のあとに起こることが多く、子どもの場合は急性中耳炎後になる事も多い疾患です。耳管の働きが悪くなり、鼓膜の奥の中耳副鼻腔に水がたまり耳閉感、軽度の難聴がおこります。 治療は内服治療、鼻の治療、通気治療、難治性の場合は鼓膜切開術、鼓膜換気チューブ挿入術が必要な場合もあります。 通気治療は耳管の働きを改善する治療です。また鼻アレルギー、副鼻腔炎などの合併がある場合は同時に治療が必要です。 難聴は軽度の場合が多いのですが子どもの場合は学校生活に支障がおきる事(授業の声がはっきり聞こえないなど)もあり治療が必要です。進行すると特殊な中耳炎(癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎など)になる場合があり注意が必要です。 

2.風邪の時の耳閉感


風邪をひいて鼻やのどの炎症が起こると、耳管が腫れて狭くなったり、鼻汁がたまったりして耳管の働きが悪くなることがあります。そのために鼓膜がへこみ、耳がつまった様に感じます。特に鼻すすりする癖のある人は耳の中の空気が耳管から鼻に吸い取られ鼓膜がへこんでしまいます。鼻をかんで鼓室の中に空気が入りすぎても、鼓膜が膨らんだ結果、つまったように感じます。鼻アレルギーや慢性副鼻腔炎などの鼻の病気がある人に耳閉感が出やすいのはこういう理由です。さらに進行すると滲出性中耳炎に移行することがあります。鼻かみは強くかまないようにしましょう。 

3.飛行機に乗った時の耳痛、航空性中耳炎


飛行機搭乗時は気圧の変化に伴い中耳腔の気圧の調節が必要です。この調節がうまくいかないと耳閉感、耳痛などの症状がでやすくなります。特に飛行機下降時(着陸時)に注意が必要です。 飛行機の機体が上昇時は相対的に中耳腔が外界に対し陽圧となりある一定以上の陽圧になると自然に耳管が開大します。そのため機体上昇時には耳にはあまり負担にならないことが多いです。 一方、機体下降時には中耳腔は相対的に陰圧となりこの時には自然に耳管が開きません。 多くの人は唾のみなどの嚥下運動だけで耳管がひらきますが、これがうまくいかない人がいらっしゃいます。機体下降時は意識的に耳管を開大させなければならず、開大がうまく出来なければ、耳痛などの耳症状が出やすいのです。 搭乗前時に風邪ぎみの時は注意が必要です。 搭乗後は特に飛行機下降時には、意識的に唾液を嚥下したりあくびをして耳管を開くようにしましょう。チューインガムをかんだり、飴玉をなめたりするのも一法です。症状がとれない場合は、鼻をつまんで軽く鼻に息をはきその後嚥下をしましょう。もし、翌日までに耳痛、耳閉感などの症状がとれないなら耳鼻咽喉科を受診しましょう。